2013年3月13日水曜日

ある日のある夫婦の会話

「買っちゃった・・・」

彼女は、いかにも何か思い出したように料理の手を休め、キッチン・カウンター越しに、そう告げた。

ぼんやりとテレビのニュースをみていた彼は、不意をつかれて、

「え、なに? なにか言った?」

と訊き返した。


彼女は満面の笑顔で、

「だから買っちゃったの・・・」

と宣言した。


「だからなにを?」

「うん、ちょっとね、また新しい服・・・」

「エ? また買ったの? このあいだ買ったのはどうした?」

「アァ、あれ? それがさァ、どういう訳か、少し縮んじゃったみたい」

「縮んだ?」

「そう、ウエストのあたりが・・・微妙に」

「なにが微妙に・・・だ。ただ単に洋服側が縮んだんじゃなくて、その着る側に問題が発生したってことじゃないの?」

「ま、そうとも言えるかもね」

「それじゃまるで、『眼にゴミが入った』と言うべきところを、『ゴミに眼が入った』って言ってるみたいじゃないか、まったく・・・」

「来週、○○の卒業式でしょ。前に買ったのをちょっと着てみたら、あら何と不思議、ウエストのあたりが少しばかりキツクなっててさぁ」

「なにが『あら不思議』だよ・・・」


彼女は、頑なに自らの罪を認めようとしない容疑者のように、決して「肥った」とは自供しないし、ましてや、まるで呪わしい言葉のように、ゼッタイに「体重が増えた」とも口にしない。


「だからもう買っちゃったの!」

彼女はみずから始めた会話を断ち切るように、無心にキャベツのみじん切りを始めた。


付記: 以上の会話はフィクションです。登場する夫婦は架空のものであり、あくまで創作に過ぎません。あしからず。

2013年3月4日月曜日

不思議な経験

今日は不思議な経験をしました。

アメリカ人の上司がオフィスに来るなり、「これ見て。昨日の夕方、こんなもの拾ったよ」と、どっさりと拾得物を床に拡げました。見てみると、ずぶ濡れになった日本人名義の銀行通帳が数冊、クレジットカードやキャッシュカードが数枚、家族全員のものと思われる健康保険証カード数枚、多数のポイントカードやメンバーズカードなどでした。お金はありませんでした。

どこで拾ったのかと訊ねると、東京湾に面したベース内の海岸だそうです。彼の趣味は釣りなので、流れ着いたルアーや浮きなどが落ちてないか海岸をよく散歩するそうです。昨日もいつものように散歩していると辺り一面に上記のものなどが散乱していたそうです。

早速、一緒に日本の交番へ届けに行きました。拾得物の内容から何か悪い予感がしました。警察官はあるところに電話し、銀行通帳の名前を告げ、状況を説明していました。すると、すぐに持ち主が判明しました。ナント、横浜で「ひったくり」にあった被害者だったのです。

警察官によると、たぶん「ひったくり犯」はバックの中のお金を盗ると、その他のものは近くの鶴見川にでも捨てたのではないかということでした。それが東京湾の潮にのってベースの海岸に流れ着いたのではないかとのことです。

まだ他にも流れ着いているかもしれないということで、ベース憲兵隊のエスコートで警察官と一緒に上司が発見した海岸へ行きました。辺りを探していると、そこには盗まれたと思われるハンドバックやポーチがありました。やはり盗難にあった後、流れ着いたようです。

 こんなこともあるんですね。不思議な経験でした。

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