2015年5月13日水曜日

「20歳(ハタチ)のころ(18)」

ヨーロッパ旅行への準備を始めました。あくまで野宿覚悟の貧乏旅行ですから、まるでヒマラヤにでも登るのかと思うほどの大きめのバックパックや寝袋を購入しました。それに折角の旅行ですから、記念になるような写真を撮るため、ライオン・ヤード近くのカメラ店で新たに一眼レフを購入しました。もちろんメイド・イン・ジャパン(Made in Japan)です。店員も、日本で買った方が安いんじゃないか、と冗談を言って笑っていました。それもそうだな、と思いました。それと同時に、少々散財したかな、と後悔しました。

赤居さんの練りあげた旅行計画は、次のようなものでした。まずはロンドンへ列車で行って東へと向きを変え、フェリーでドーバー海峡を渡ってフランスは花のパリを訪ねる。ルーブル美術館でモナリザを鑑賞して芸術的感性を刺激し、シャンゼリゼ通りをぶらついて凱旋門を見上げ、エッフェル塔に登ったあと、モンマルトルの丘のカフェで詩想に耽る(ふけ)る。そして一路、列車でスペインのマドリッド、トレド、そしてバルセロナへと足を伸ばして建設中のサクラダ・ファミリア教会を見物し、そのあと地中海沿いにモナコやフランスのニースに立ち寄って、ビーチでビキニやトップレスのオネェイちゃん達を眺めながら眼の保養をする。

イタリアに入ってからは、ジェノア、ミラノ、ローマ、フィレッチェと歴史遺跡群を訪ねて知的興奮を覚え、水の都ベニスから一路北へ向かって、衝立(ついたて)のように眼前に聳(そび)えるスイス・アルプスを仰ぎ見て感動し、オーストリアの音楽の都ザルツブルグやウイーンへと巡ってクラッシック愛好家のような振りをしてワルツなどを堪能する。その後ドイツへ向かって、ミューヘンのビール祭りでたらふく美味しいビールを飲み、フランクフルトで地元本場のソーセージを食して英気を満たし、オランダのアムステルダムでは運河沿いの飾り窓を巡って性風俗の社会見学をする、等など。

正直、ポルトガルのリスボンやギリシャのアテネへも足を伸ばしたかったのですが、知り合った両国の留学生もいなかったし、時間的・金銭的余裕もなかったので、泣く泣く諦めました。しかし、ほぼヨーロッパ全域をカバーした旅程でした。途中、それぞれの友達がいたので、別行動をとることもありましたが、まさに三人での珍道中となりました。旅は人生を豊かにする、と言いますが、まさしく貴重な体験をすることができました。

(つづく)

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