2008年12月5日金曜日

関東大震災

吉村昭の「関東大震災」を読んだ。

大正12年9月1日、駿河湾を震源地に起きた大地震を、様々な資料を凌駕し貴重な体験談をもとに克明に描いた記録文学である。

関東一円に未曾有の大災害を起こし、不幸にも何十万という人々が亡くなっている。興味深いのは、地震によって倒壊した家屋に押しつぶされて亡くなった人たちよりも、その後に各地で起きた火災によって亡くなった人たち、またそれに伴う烈風に巻き上げられたり、火の手から逃れられず川へ飛び込み水死した人たちが実に多かったことである。

また殊に、地震発生時が昼時ということもあって、かまどや七輪による火災が多かったことが被害を拡大した要因となったようだ。大八車に布団や衣類などの家財道具を積み、逃げ惑ううちに火の粉を浴びて発火し、火災の範囲を広げている。

安全だろうと逃げ込んだ空き地へは夥しい数の人たちが殺到し、突然発生する火災や烈風によってパニックになり、我先に逃げ惑う群集に踏み潰されたりして亡くなった人たちも多かったようだ。

特に悲惨だったのは、この混乱に乗じて在日朝鮮人が襲撃してくるといった何の根拠もないデマにより、何千人という朝鮮人たちが殺されたことだ。地震後の劣悪な環境による伝染病の発生も死者の数を増やしている

大地震というものの恐ろしさを改めて感じた。

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