2016年2月6日土曜日

「20歳(ハタチ)のころ(26)」

バレンシアからは地中海沿いに列車で北東へと進みました。つぎの目的地は、バルセロナ(Valcerona)です。バルセロナは、マドリッドに次ぐスペイン第二の都市です。古い石造りの建物が立ち並ぶ街路は、とても開放的で魅力にあふれていました。ベランダにはベゴニアの赤い花々が飾られていました。街全体が陽光にあふれていて、美しいビーチがどこまでも続いていました。もちろん当時はまだオリンピックの開催まえです。

バレンシア同様、真っ青に澄みきった空の下、赤居さんと眼前にひろがる地中海の碧い海原を眺めながら、時折、眼の覚めるように美しいスパニッシュ女性たちにすっかり心を奪われていました。貧弱で挙動不審な若い東洋人ふたりが何やら物欲しそうに砂浜にすわってキョロキョロしている様子というのも、何とも痛ましい光景だったでしょうね。

しかしながら、あくまでふたりの名誉のために言っておくと、バルセロナを訪ねた目的は、もちろんビーチで日長一日、眼の保養の『ビキニ・ウォッチング』をすることではありません。現在も建設中のサクラダ・ファミリア(Sagrada Família)を訪ねることが主な目的でした。

その教会を訪ねた折、観光客の出入り口付近で一心に石を削っている若い日本人作業員を見かけました。頭にはタオルを巻いて、全身が粉塵で真っ白でした。思わず声を掛けましたが、どんな会話をしたのか今では思い出せません。まだ重要な仕事を任せられていない一介の作業員のようでした。コツコツと地道に作業している彼の姿がいまでも記憶に残っています。

日本に帰国して数年後、何気なく、サクラダ・ファミリアを特集したテレビの旅番組を見ていると、あの時の日本人作業員が映っていました。なんと彼は全工事の監督責任者になっていました。いや驚きましたね。さすがに勤勉な日本人です。いつ終わるのかも分からない歴史的建造物の工事に、日本人が携わっていることに同じ日本人として誇りを感じました。

(つづく)

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