ブライトンでの短期語学留学を終えました。それとともに、スペイン人の留学生サルバとも別れることとなりました。彼は、日本人以外では初めての友人でした。短いながらも異国での生活を共にした経験は、国際感覚を養う上において貴重な糧でした。人種や国籍はどうであれ、人間として心が通じ合う関係とは何と素晴らしいものか、と感じました。
サルバとの別れは非常に辛いものがありました。お互いに眼に涙をため抱き合い、再会を誓いました。母国を離れ、勉学に励む同じ留学生として、別れはさらに胸に堪えました。彼とは、留学後半のヨーロッパ旅行でマドリッドに立ち寄った折、奥さんともども再会を果たしました。非常な努力家でしたので、後年は、さぞかし銀行内でも偉くなったでしょう。
ホームステイ先のウェルズさん老夫婦も、涙を流していました。滞在中には、実の子供のように接してくれました。夫婦には、スティーブ・ジョブズに似た息子さんが一人いました。たまに遊びにきた折には様々なことを話しました。とても紳士的な人でした。やはり人種は違っても、人間としての繋(つな)がりや暖かさが身に染みました。
語学学校の同級生たちともお別れのパーティをしました。海の見える学校の教室でした。クラスメイトひとりづつと抱き合って、別れを告げました。すると突然、金髪のフランス人のクラスメイトが抱きついてきて、キスをしました。クラスでもほとんど話したことがなかったのに、彼女の突然の行動に戸惑ってしまいました。呆気にとらわれて茫然(ぼうぜん)としてしまいました。しかし、なぜか嬉しさが込み上げてきました。
ブライトンを発って、ケンブリッジへ向かう途中、ロンドンへ立ち寄りました。英国留学を勧めてくれた神戸の叔母さんの知り合いを訪ねるためです。叔母さんから英国滞在中に一度は訪ねるように言われていました。ロンドンの郊外に住む日本人家族です。小さい女の子がひとりいて、ご主人は、日本大使館近くの和食レストランで働いていました。英国にはもともとレーサーを目指して来たけど、思い通りにはいかなかった、と苦笑していました。わざわざ会いに来てくれたことを喜んでくれて、歓迎してもらいました。とっておきのスコッチ・ウイスキーをシコタマ飲まされ、死ぬかと思うほどトイレで嘔吐(おうと)したのが、「苦い」思い出です。
日本は、はるか彼方(かなた)にありました。
(つづく)
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