2015年1月10日土曜日

「20歳(ハタチ)のころ(1)」


 
いまから30数年前、英国のケンブリッジ(Cambridge)に住んでいました。単身での留学でした。いま振り返ってみても、よくもまあ思い切った行動に出たものです。当時、海外旅行の経験すらないのに、ひとり海外で生活しようというのですから、いやはや呆れたものです。いわゆる、「若気(わかげ)の至り」といったところでしょうか。まさに、無知は怖いもの知らず。

周知のように、ケンブリッジは、オックスフォードと並び称される英国有数の大学都市です。ロンドンの北北東に位置し、街全体が中世の面影を色濃く残しています。緑豊かで、中心街の西側にはケム川(Cam River)がゆるやかに流れ、パント(punt)とよばれる小舟が行き来しています。ホームシックになると、よくこのケム川沿いの芝地に寝ころんで、あきずに空を眺めていました。

授業のない週末には、古色蒼然(そうぜん)とした石造りの建物群のなかを散策したり、おなかが空くと、英国のファースト・フードであるフィッシュ・アンド・チップス(Fish & Chips)を買って食べたりしました。ホクホクとした白身の魚を頬張りながら、あてもなく街中をよくブラブラ歩きました。

たまには中国人がやっている路地の小さなお店で、チャーシュー・フライドライス(焼き飯)を食べました。とても安くて美味しかったのを覚えています。ここの小柄な中国人のおじさんが、勘定を済ませるたびに、「再見!(サイチェン!)」と言っていたのが今でも耳の奥に残っています。「また来てね!」といったくらいの意味でしょうか。

(つづく)

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