2015年1月12日月曜日

「20歳(ハタチ)のころ(2)」


ケンブリッジに住み始めた家は、中心街から少し南へ下った閑静な住宅地にありました。そこで、しばらくホームステイをしました。生の英語に慣れるには、それが一番だとおもったからです。

ホームステイ先のその家は、ストレンジウェイ・ロード(Strangeway Road)といった不思議な(ストレンジ)名前の通りにありました。品の良い老婦人がひとりで住んでいました。名前は忘れてしまいました。もう30数年も前ですから、彼女もすでに亡くなったでしょうね。大きな木組みに白壁の映えた瀟洒(しょうしゃ)な家でした。よく手入れされた庭があって、芝生の脇には赤いバラが咲いていました。

しばらくそこにお世話になりました。快適でしたね。ある週末の朝、あまりに良い天気なので、ジョギングに出ました。ケンブリッジの郊外は、一面どこまでも続く草原地帯です。ジョギングに出たのは良かったのですが、その美しい田園風景に魅了され、真っ直ぐに伸びた道路を気持ち良くひたすら走りました。

ふと気づいたときには、ずいぶんと遠くまで走っていました。帰りも同じ距離を戻らなければならないことに暗澹(あんたん)とし、もう疲労困憊(こんぱい)で家路につきました。辺りもすっかり暗くなってしまい、走りすぎて痛くなった両脚を引きずりながら帰り着きました。

(つづく)

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