2008年11月13日木曜日

歌川広重盗作疑惑について


先月、江戸東京博物館で開催されている「ボストン美術館浮世絵名品展」に行ってきました。

以前から浮世絵を見るのは好きだったので足を運んだのですが、やはり素晴らしい。そして保存状態が良く、いま刷り上がったような色合いだった。特に好きなのは江戸後期の浮世絵で、その構図や色づかいは世界に誇れる絵画だと思う。絵師たちの才能も素晴らしいが、絵を作り出した裏方でもある彫師や刷り師たちの技術は眼を瞠るものがある。髪の毛よりも細い線を彫って刷りあげていく、その集中力と正確さたるや正に熟練の技を超えている。

そんな浮世絵鑑賞で感動しているある日、あの有名な歌川広重の東海道五十三次の絵が盗作の疑いが濃いというテレビ番組をみた。それによると、どうも広重は東海道を歩いていないし、その構図がかれの時代より前の司馬江漢という絵師の描いた五十三次に酷似しているとのことだった。実際に描かれた地点に行ってみると、司馬江漢の絵の方が山の稜線や構造物の様子がより忠実に描かれている。たとえば、藤沢あたりの絵だが、広重が歩いたといわれる時期に、絵の中に描かれてあるお寺は火災で焼失していたとか、京都の三条大橋の橋げたは秀吉の頃に石造りになっていたにもかかわらず、広重の絵は木造になっているとかいった具合だ。大変興味深い。しかしそれが本当だったとしても、やはり広重の絵は素晴らしい。

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