2011年7月25日月曜日

書評 ― 差別と日本人(野中広務・辛 淑玉)


考えさせられる本でした。新聞に出ていた「新書ランキング」で上位にあったので、早速購入して読みました。元・衆議院議員で部落出身の野中広務氏と在日の辛 淑玉女史の対談集です。

普段は気にもかけない差別という問題について、自らの体験を基に日本人の心の中にある差別感情やそれに基づく行為などについて語り合っています。野中氏の政治家を目指した志というものが、この社会から差別を無くし、また被差別の人たちが被害意識を逆手にとって自己の利益へ誘導するのを防ぐ政策を立てていくことであったということに心を打たれました。少々彼の自慢話の感もありますが、何のために政治家になったのかも分からない今の議員たちにぜひ読んでほしい本です。

辛 淑玉女史はというと、あまりに被害妄想がひどいようで、やたらに日本人が在日の人たちを差別しているような話しぶりです。個人的に在日の人を知っていますが、非常に心あたたかく、スマートで、日本人以上に素晴らしい人です。差別と言うのは、あくまでも自らの思い込みによるところがあるように思います。彼女のように一方的に差別を受けていると訴えている方が、ますます差別感情を増幅させるような気がします。

しかし悲しいことですが、差別というのはどうしてもこの社会からは無くならないでしょうね。人間にとって、他人との優位性を感じながら生きてゆくのは、避けられない種の本能ともいうべきものかもしれません。先日起こったノルウェーでの無差別テロも、移民に対する増悪というものが理由のようです。子供たちのイジメ問題も、やはり自分より劣っていると感じる対象を攻撃するという差別意識から引き起こされているようです。

人類みな兄弟。同じ人間どうし、お互いを思いやり、素直な心で接することが大切だと思います。

0 件のコメント:

Readers