一言で言うと、非常に悲しく、空恐ろしい小説です。
話の筋から察すると、時代はおそらく幕末の頃ではないでしょうか。ある極貧の漁村の過酷な生活を、ひとつの家族を中心に描写しています。
吉村昭の無駄のない淡々とした文体が、厳しい自然と共に生きる村の人たちの悲劇を一層深めています。『冷い夏、熱い夏』や『海も暮れきる』といった作品にも通じる、悲愴な運命を背負った人間を克明に描いています。
吉村昭の小説は、死生観をテーマにした初期の作品や、実話を元にした漂流もの、戦史もの、また後年の幕末歴史小説など多彩ですが、この小説のような作品も読み応えがあってお薦めです。
深い愛情でつながれた家族の絆の大切さを再認識させられました。
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